CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは?特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説

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中央銀行が発行するデジタル法定通貨「CBDC」をご存知でしょうか?CBDCは「中央銀行デジタル通貨」のことで、中国のデジタル人民元が最たる例として注目されています。まだまだ開発段階ではありますが、デジタル決済が広く浸透している近年では、導入を期待する声もあります。

とはいえ「デジタルの法定通貨の特徴は?発行するメリットはあるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、CBDCの特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。ぜひ最後までお読みください。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは?特徴を解説

CBDCとは、Central Bank Digital Currencyの略称で、中央銀行が発行するデジタル通貨を指します。

一般的にCBDCは以下の特徴を満たすものであると言われています。

  • デジタル化されていること
  • 円などの法定通貨建てであること
  • 中央銀行の債務として発行されること

デジタルな通貨といえば、仮想通貨をイメージする方も多いはずです。しかし、CBDCと仮想通貨は異なる部分が多々あります。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)の誕生背景

CBDCの誕生背景には、2019年にフェイスブック(現メタ)が発表した「リブラ」が関係しています。

リブラは価格が安定しやすい「ステーブルコイン」という仮想通貨で、世界各国で使用されることを前提に構想されました。

しかし、民間企業が金融インフラを支配する可能性があることから国際的な非難を受け、2022年2月にはプロジェクト自体が消滅しています。

ただ、リブラが国際社会に与えた影響は大きく、世界的に「法定通貨のデジタル化」を考えるキッカケとなりました。

中国によるデジタル人民元の開発も重なり、現在はアメリカやEU(欧州連合)もCBDCの開発を推し進めています。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)と仮想通貨の違い

CBDCは仮想通貨と混同されがちですが、異なる部分もあるため注意しましょう。

CBDCと仮想通貨の違いは、主に以下の3つです。

  • 法定通貨であるかどうか
  • 供給量の違い
  • 管理者の有無

それぞれ順番に確認していきます。

法定通貨であるかどうか

CBDCと仮想通貨の大きな違いは法定通貨であるかどうかです。

CBDCは、各国の中央銀行が発行する法定通貨です。国家が通貨の価値を保証しています。

対して仮想通貨は、基本的に国家の管理を受けない通貨です。国家による裏付けがないため、需要と供給によって価値は大きく変動します。

供給量の違い

国の通貨であるCBDCは、国が供給量を調整しています。経済の状況により、市場に出回る通貨の量は変動する仕組みです。

対して仮想通貨の多くは供給量が決まっています。

例えばビットコインであれば、供給量は約2,100万枚と上限が定められており、基本的にこの数に変更はありません。

管理者の有無

前述したようにCBDCは中央銀行が発行するため、中央の管理者が存在します。

一方で仮想通貨は中央の管理者は存在せず、P2Pネットワークに参加する複数のコンピューターが分散管理しています。

国家が完全にコントロールできるCBDCと違い、仮想通貨は自律分散的に動いているためコントロールすることは不可能に近いといえるでしょう。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)のメリット3つ

CBDCのメリットは以下の3つです。

  1. コストを削減できる
  2. 透明性が高く不正が起きにくい
  3. 決済システムを効率化できる

1つずつ順番に解説していきます。

1.コストを削減できる

現在の硬貨や紙幣などの発行には、大きなコストがかかっています。通貨の製造や廃棄だけでなく、レジ・ATMなどにも費用が必要です。

CBDCを導入すれば、このようなコストが削減できるとされています。

2.透明性が高く不正が起きにくい

CBDCは取引履歴をすべて記録することが可能なため、現金を使った不正などが起きにくくなります。

現金のデメリットに、マネーロンダリングや脱税といった不正が把握できないことが挙げられます。

しかしCBDCであれば、取引履歴を追跡可能なため、上記のような不正を抑止できるでしょう。

3.決済システムを効率化できる

CBDCでは、決済システムを効率化できます。

納税や送金の際もデジタル上で行うため、高速化されます。例えば、コロナ禍で支給された特別給付金なども、CBDCであれば迅速に対応が可能です。

決済による手間と時間を削減できるため、CBDCの大きなメリットといえるでしょう。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)のデメリット2つ

CBDCのデメリットは以下の3つです。

  1. 取引の匿名性が失われる
  2. 災害時のリスクが大きい

それぞれ順番に確認していきましょう。

1.取引の匿名性が失われる

取引履歴をすべて記録することは不正防止に有効ですが、同時に取引の匿名性を失ってしまうデメリットもあります。

中央銀行に取引の流れを把握されるため、プライバシーが守られないとの声も上がっています。

2.災害時のリスクが大きい

災害時などのリスクが大きいこともCBDCのデメリットです。

CBDCはデジタル上で展開されるため、災害時などによりネットワークの不具合が起これば、機能停止するおそれがあります。また、サイバー攻撃を受ける可能性もあります。

そのため、オフラインでも使える仕組みをつくったり強固なセキュリティ基盤を整えたりするなどが必要です。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)は日本でも導入される?

各国が実証・研究を進めているCBDCですが、日本は導入に慎重な構えです。日本銀行のホームページでも、すぐにデジタル円を発行する計画はないことが記載されています。

しかし、日本でもCBDCの普及には備えており、2021年4月からは3段階に分けた実証実験を開始しました。

直近の2023年4月17日には、検証実験フェーズ2の結果報告書が公表され、CBDCの活用可能性について報告されています。

また、2023年4月からは「パイロット実験」という技術面と運用面の実験が行われる予定です。CBDCの研究が進んでいけば、日本での導入も現実的なものになるでしょう。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)の将来性・今後の見通し

CBDCの将来性・今後の見通しとして、以下の3点を解説します。

  • デジタル化とともに発展する
  • 国際送金に利用される
  • 現金志向も根強い

順番に見ていきましょう。

デジタル化とともに発展する

近年は、あらゆる分野でデジタル化が進んでいます。たとえば、通話ツールを用いたリモートワークや、資料のペーパーレス化などが代表的です。

決済システムにおいても同様で、クレジットカードやQRコード決済といったキャッシュレス化が進み、紙幣の需要は下がっています。

このようにアナログからデジタルへの移行は止まらないため、CBDCは発展すると考える方が自然です。

国際送金に利用される

CBDCは、国際送金への利用が検討されています。

実際、2021年にSWIFT(国際銀行間通信協会)は、異なるCBDCネットワークの相互運用性の検証実験を行いました。

また、2022年には国際決済銀行(BIS)がCBDCのクロスボーダー決済の実現可能性を検証しています。クロスボーダー決済とは、国境を越えて行われる取引のことです。

国際送金での利用が確実視されていることから、世界各国でCBDCの開発は今後も進んでいくでしょう。

現金志向も根強い

CBDCは将来的な普及が期待されますが、現状は現金でのやり取りを志向する人も多いです。

とくに日本は現金志向が強い国と言われており、キャッシュレス化も他国に遅れを取っています。

また、深刻な少子高齢化問題により、高齢者の方がCBDCを使用しないといった課題もあるでしょう。

そのため、CBDCは国や地域によって普及率に差が出ると予測できます。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)の事例5選

ここでは、CBDCの導入事例を5つ紹介します。

  • 中国(デジタル人民元)
  • スウェーデン(eクローナ)
  • バハマ(サンドダラー)
  • アメリカ(デジタルドル)
  • EU(デジタルユーロ)

1つずつ詳しく見ていきましょう。

中国(デジタル人民元)

中国はCBDCの導入に積極的な姿勢を見せている国です。これまで多くの実証実験を行い、2022年の北京冬季オリンピックでは、外国人向けに「デジタル人民元」が提供されました。

スウェーデン(eクローナ)

スウェーデンでは、デジタル通貨「eクローナ」の導入を進めています。

国内のキャッシュレス決済の拡大により、実証実験を進めている段階です。

バハマ(サンドダラー)

バハマはデジタル通貨「サンドダラー」の運用がすでに始まっています。

700以上の小島からなるバハマは、現金運搬のコスト削減のためデジタル通貨の運用を開始しました。

アメリカ(デジタルドル)

アメリカでは、2022年3月にバイデン大統領が「デジタルドル」の発行に向けた研究を加速させるよう、各機関に指示を出しました。

デジタルドルの発行が決まったわけではありませんが、世界的なCBDCの普及に遅れを取らないように準備を始めています。

実は、アメリカは以前までCBDCの発行に否定的でした。しかし、中国のデジタル人民元の台頭により、対抗としてデジタルドルの構想を始めたと見られています。

EU(デジタルユーロ)

EU(欧州連合)では、ECB(欧州中央銀行)がデジタルユーロの実証実験を始めました。

実証実験にはAmazon(アマゾン)を始めとした5社が参加しており、デジタルユーロの技術調査を進めている段階です。

ただし、デジタルユーロが将来的に発行されるかどうかはわかりません。実証実験が終了した後に、ECB(欧州中央銀行)がデジタルユーロを正式に開発するか否かを判断します。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)のまとめ

今回は、CBDCの特徴やメリット・デメリット、将来性などを解説しました。

CBDCのまとめは、以下のとおりです。

  • 各国の中央銀行が発行する「デジタル法定通貨」のこと
  • 紙幣発行や貨幣の鋳造が不要なので、コストを削減できる
  • 取引履歴の明確化ができる反面、プライバシー侵害のリスクもある
  • フェイスブックのリブラや、中国のデジタル人民元の誕生によって必要性が増した
  • デジタル化の促進や国際送金への利用を考えると、将来的に普及する可能性が高い

なお、CBDCは仮想通貨と混同されやすいです。とくに、価格の安定化を目的とした「ステーブルコイン」とは性質が似ています。

ステーブルコインを理解してCBDCとの違いを知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。

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