モジュラー型ブロックチェーンとは?スケーリングに対する新たなアプローチ
モジュラー型ブロックチェーンは、ブロックチェーンの構成要素を、分業で行っていくムーブメントです。
ブロックチェーンの諸問題を解決するポテンシャルを持ち、プロジェクトによっては数十億円の資金調達に成功しているものも見られます。
この記事では、そんなモジュラー型ブロックチェーンの概要、特徴、代表的なプロジェクトなどについて解説しています。
モジュラー型ブロックチェーン(modular blockchain)とは?
これから、モジュラー型ブロックチェーンの基礎的な概念や、モジュラー型ブロックチェーンの概要などについて、以下のポイントから解説していきます。
- ブロックチェーンの主要構成要素
- モジュラー型ブロックチェーンの概要
- モノリシックとモジュラーの比較
モジュラー型ブロックチェーンの大枠を押さえていきましょう。
ブロックチェーンの構成要素
ブロックチェーンには、以下のような欠かせない構成要素が存在しています。
- 実行:トランザクションの実行
- 決済:紛争解決、レイヤー間の通信など
- コンセンサス:新たな取引に対する合意
- データの可用性:データが利用・閲覧可能である性質
上記のような主要な構成要素が問題なく機能することで、さまざまなトランザクションがブロックチェーンを通して記録されていきます。
逆にどこかでトラブルが発生した場合、ブロックチェーンは停止・機能不全に陥る可能性があります
モジュラー型ブロックチェーンの概要
モジュラー型ブロックチェーンでは、前述したようなブロックチェーンの主要構成要素を、異なるレイヤーごと・ソリューションごとに担います。
(引用元:Celestia)
具体的には、実行・コンセンサス・データの可用性などの要素を、各レイヤー・役割に応じて異なった単一の主体が処理を行っていきます。
そして、担当するレイヤーの仕事が終わった場合、処理し終わった内容を他のレイヤーに渡す訳です。
モジュラー型ブロックチェーンが志向するエコシステムは、ブロックチェーンにおける分業体制のようなものになっています。
モノリシックとモジュラーの比較
モジュラー型ブロックチェーンの対義語として用いられるのが、モノリシックブロックチェーンです。
モノリシックブロックチェーンは、前述したような構成要素を単一のブロックチェーンで済ませるものを指します。
ビットコイン・単一のイーサリアムなどが代表的なブロックチェーンです。
一方で、モジュラー型ブロックチェーンでは、前述した通り構成要素を分業で行っていきます。
(引用元:Fuel Network)
両者は必ずしも対立するものではなく、どこかのレイヤーにおいて既存のモノリシックブロックチェーンを導入することも可能です。
例えば、実行・決済を別ソリューション、DAのみをイーサリアムといった運用もできます。
実際に、多くのモジュラー型ブロックチェーンのプロジェクトは、既存のソリューションやブロックチェーンをスケーリングすることに焦点を当てています。
モジュラー型ブロックチェーンの特徴
これから、モジュラー型ブロックチェーンが持つ特徴について、以下のポイントから解説していきます。
- 諸問題やスケーリングへの可能性が広まる
- 柔軟性が高まる
- L2よりも広い概念
モジュラー型ブロックチェーンがもたらすメリットや利点をチェックしていきましょう。
諸問題やスケーリングへの可能性が広まる
モジュラー型ブロックチェーンによって、スケーリング問題解決に対する可能性を広められます。
現在の主要なブロックチェーンには、何れかの部分で問題を抱えていることが多いです。
- 分散性
- スケーリング
- セキュリティ
上記の3つのポイントは、ブロックチェーンのトリレンマとも呼ばれます。
どれか2つを取ると、1つが弱まってしまうという問題を指しています。
例えば、イーサリアムは高い分散性・セキュリティを持ちますが、スケーリングは妥協している状態です。
一方で、イーサリアムよりも高い処理能力を持つようなブロックチェーンは、分散性 or セキュリティのどちらかを妥協しがちです。
モジュラー型ブロックチェーンでは、各レイヤーが担当する作業に集中することで、上記のトリレンマを解決するのでは?と期待されています。
新規チェーンの利便性・柔軟性が高まる
モジュラー型ブロックチェーンでは、新たにブロックチェーンを立ち上げる際の利便性・柔軟性が大きく高まります。
モノリシックブロックチェーンでは、新たなブロックチェーンを立ち上げる場合、単一の主体で構成要素を全て満たす必要がありました。
一方で、モジュラー型ブロックチェーンであれば、各レイヤーが提供している機能を利用することで、かんたんにブロックチェーンを立ち上げられます。
また、必要に応じて各レイヤーのソリューションを柔軟に選択できる点も魅力です。
例えば、セキュリティや実行のレイヤーにおいて、プロダクトに必要な要件を満たすソリューションを選択し、カスタマイズされたブロックチェーンを立ち上げられます。
ロールアップよりも広い概念
ロールアップは、モジュラー型ブロックチェーンの1種といえます。
例えば、イーサリアムのL2であるOP・ZKロールアップは両者とも、イーサリアムに依存した実行レイヤーです。
ブロックチェーンの構成要素にあてると、ロールアップは実行を担い、その他の要素はイーサリアムが担っている状態です。
そのため、構造的にはモジュラー型ブロックチェーンの1つと見ることもできます。
ただし、モジュラー型ブロックチェーン = ロールアップではなく、もう少し広い概念です。
モジュラー型ブロックチェーン系のプロジェクトは、単一のL1に必ず固定されている訳ではありません。
また、モジュラー型ブロックチェーン系のプロジェクトは、必ずしも実行レイヤーでもありません。
データの可用性やコンセンサスのレイヤーを担うプロジェクトもあります。
モジュラー型ブロックチェーンの主要プロジェクト
これから、モジュラー型ブロックチェーンの主要なプロジェクトについて、以下の3つから解説していきます。
- Celestia
- Avail(Polygon Avail)
- Fuel
モジュラー型ブロックチェーンの主要なプロジェクト・ソリューションをチェックしていきましょう。
Celestia
代表的なモジュラー型ブロックチェーンのプロジェクトの1つが「Celestia」です。
Celestiaは、コンセンサス・データの可用性に特化したモジュラー型ブロックチェーンです。
取引履歴の一部分のみをサンプリングすることで、ライトノードでフルノードと同じような作業を実行できるといった特徴を持ちます。
上記のような特徴によって、コンセンサス・データの可用性におけるスケーリングを確保します。
Avail(Polygon Avail)
Availは、Celestiaと同じようにデータの可用性などを扱ったレイヤーのプロジェクトです。
元々はPolygon Availとして、Polygonが提供するソリューションの1つとして開発されていました。
2023年3月にPolygonから独立し「独立は互いに利点がある」という旨のブログをPolygonが投稿することになりました。
そのため、現在はPolygonが提供・開発するソリューションではありません。
しかし、著名なソリューションを多数提供するPolygonの元製品であることは事実なので、注視していきたいプロジェクトの1つです。
Fuel
Fuelは、実行レイヤーに焦点を当てたプロジェクトです。
実行に特化したプロジェクトのため、基本的な特徴としては「高い処理能力」を持っている点が挙げられます。
具体的にはトランザクションの並列処理が可能であること、独自のVM・言語を提供していることなどが特徴として挙げられます。
モジュラー型ブロックチェーンについてまとめ
さまざまなプロジェクトが、ブロックチェーンの諸問題を解決するために動いています。
モジュラー型ブロックチェーンは、スケーリングや分散性など諸問題に対する新たな解決策の1つです。
Celestiaなど、メインネットのローンチに近づきつつあり、今後注目していきたいトピックの1つです。
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