NFTが「やめとけ」と言われる納得の理由
「NFTはやめとけ」という言説が流れています。
よく聞く理由は「ただのデジタルデータでしょ?無価値じゃん」「なんか詐欺とか盗難とか怪しい噂を聞いたよ」などが挙げられます。
たしかにNFTはまだ法整備が整っていませんし、その価値が世間に認められていないのは事実です。
ただその一方で、集英社やスクウェアエニクスなどの大手企業がNFT事業に参入することが増えています。
本当に怪しいだけならここまでのムーブメントは起こらないはず。そこで本記事では、NFTがやめとけと言われる背景を紹介するとともに、NFTの展望について見ていきます。
「NFTはやめとけ」と言われる4つの理由
NFTはやめとけという意見は主に4つに分けられます。
- NFTは無価値である
- 詐欺や盗難が発生していて危険だ
- 法整備が整っていない
- 市場が縮小している
NFTは無価値である
NFTはデジタルデータであるため物理的なモノが有るわけではありません。
実際に触れることはできず、眺めるにしてもモニターや画面を通してみることになります。
そのため、「NFTは物理的に無価値」と言われることがあります。
投資的観点からは、Web3リサーチ会社のdappsGamblが発表した「NFTの95%は無価値」というレポートが参考になります。
このレポートでは783,257個のNFTコレクションのうち69,795個の時価総額が0ETHだったことが明らかになりました。
過去にNFTを購入したものの、現在は価値が付かずに売れることができない状況を示しています。
Of the 73,257 NFT collections we identified, an eye-watering 69,795 of them have a market cap of 0 Ether (ETH).
This statistic effectively means that 95% of people holding NFT collections are currently holding onto worthless investments. Having looked into those figures, we would estimate that 95% to include over 23 million people who’s investments are now worthless.
https://dappgambl.com/nfts/dead-nfts/
たしかにNFTはデジタルデータなので、手で触ったり、物理的なモノを収集して楽しむという意味では無価値かもしれません。また投資的観点から言うと「売れなくなってしまった」という状況は、無価値であると言わざるを得ません。
しかし「NFTであること」に価値を感じている人がいるのも事実です。
それはNFTが持つ特性によって恩恵を得る人たち。例えば、芸能人や有名人のファンです。
ファンとしては自分が好きな人を応援したいものですが、グッズによっては高額であったり、場所を取ったりと気軽に購入できない現状があります。
その点、NFTはデジタルデータであるため、グッズをいつでも売買ができて、場所も取りません。
NFTを上手く活用しているのが「ジョニー・デップ」です。彼は自身と友人が描いた絵をNFTにして販売しています。
ジョニー・デップが描いた絵なら欲しい人もいそうですよね。
もしこれが実際の絵だと、ジョニー・デップもそんなに何枚も絵を描けませんから手に入れられる人が限られますし、価格も高額になるでしょう。
NFTであれば日本に居ながら購入できますし、リアルの絵ほどの高値は付きません。
またNFTの購入はアーティストの活動を応援することに繋がっています。
NFTは二次流通(≒転売)されるたびに制作者に手数料が入る仕組みがあるため、ファンがクリエイターに直接投げ銭ができる事が可能です。
このように「NFTならでは価値」に魅力を感じる人は存在します。実際、NFTのマーケットプレイスを覗いてみると、日々たくさんの売買が行われています。
NFTに価値を感じている人がいる以上、一概に無価値というのは少々言い過ぎかもしれません。
詐欺や盗難が発生している
NFTは詐欺や不正取引が行われることがあります。
例えば、何の価値もないNFTを高額で購入させる詐欺や、「いまなら無料でNFTが貰える!」というDMを送り付けてフィッシングサイトに誘導する手法です。
このような事例は世間の注目を集めるため、「NFTはやめとけ」という言説が出るのは理解できます。
また特にNFTが「危ない」と言われるのは、NFTがデジタルデータであることを利用した”少々特殊な詐欺”の形態があるからでしょう。
NFTはウォレットと呼ばれるWeb上のお財布で管理するのですが、そのウォレットに対して不正アクセスを仕掛けてNFTを盗むという悪質な事件が見られます。
海外勢が多いNFTのコミュニティに参加して、よく分からないままURLを踏んでしまい、気が付いたらNFTを盗られていた事例は起きています。
ただ、詐欺自体はどのような世界でも存在はします。
ひと昔前はオレオレ詐欺が流行り、コロナ禍では給付金を装った詐欺が流行りました。なにか特定のサービスが出来たり、社会に大きな変化が起きた際には詐欺や悪質な事件が付いて回ります。
NFTはデジタルデータであるため、「ネット上だけで完結する」という意味では手がつけやすかった事情もあるのでしょう。
法整備が整っていない
NFTは使用する用途によって関連する法律が異なっています。
法的性質 | 業規制(根拠法律) |
---|---|
有価証券(電子記録移転権利など) | 第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業(金融商品取引法) |
前払式支払手段 | 自家型発行者、第三者型発行者(資金決済法) |
暗号資産 | 暗号資産交換業(資金決済法) |
電子決済手段 | 電子決済手段取引業(資金決済法) |
為替取引の一部 | 銀行業(銀行法)、資金移動業(資金決済法) |
上記該当なし | 金融関連の業規制の適用なし |
問題は、NFTによって法律も解釈が分かれるという点です。必ずしもどれかの法律が当てはまるということはなく、NFTの性質によって関連する法律が変わります。
また著作権や所有権に関しても十分な議論はされていないのが現状です。
法的な定めが曖昧であるためどのルールに従えば良いのかが分かりにくくなっています。なにがOKで何がダメなのかのNGラインが明確であればビジネスへの参入もしやすくなるはずですが、まだ様子見をしている人は多い。
そういう意味での「NFTは(まだ)やめとけ」という意見も見られます。
市場が縮小している
2023年10月現在、NFTの市場は縮小傾向にあります。
画像はNFTの取引高を示したものです。
NFT取引が最も活発だったのは2021年8月頃。以降は2022年5月をピークに、取引量が落ちています。
活発な売買がされなくなったという意味では、「NFTは(先行きが暗いから)やめとけ」という意見も出ていたのかもしれません。
その一方で、NFTを売買するトレーダー自体は増えているというデータもあります。
この2つのデータからは以下の点が推測されます。
- 2021年当時はNFT売買が頻繁に繰り返されて取引量が多かった
- NFT売買を繰り返す人は数を減らしたが、参入者は増えている
- 取引高は2023年10月から回復の兆しが見え始めている
総括すると、NFTに投資的な意味を期待して参入した人は姿を消し、NFT本来の価値に見出した人が購入・保有を続けている様子が伺えます。
NFTの動向
「NFTはやめとけ」と言われるものの、大手企業や地方自治体ではNFTを活用するところが増えています。
大手企業がNFT事業に参入
集英社は「マンガを、受け継がれていくべきアートに。」をビジョンにNFTを発行しています。
NFTを発行することによって、売買記録を未来へ永続的に保存していくことを目標としているプロジェクトです。
ONE PIECEやBLEACHといった有名漫画のNFTが発行されており、ファンとのつながりをより深くする活動が行われています。
ほかにもスクウェアエニクスでは「資産性ミリオンアーサー」というNFTゲームをリリース。
さらに、インターネット関連サービス大手の楽天も「楽天NFT」をローンチしています。
地方自治体はNFTの取り組みが増えている
地方自治体では、NFTを導入して地域活性化を目指す動きがあります。
例えば北海道夕張市は夕張メロンのファンを増やすことを目的として、『MeTown』というNFTプロジェクトを始動しました。
参考:MeTown|夕張市
夕張メロンをモチーフにしたNFTを購入した人は、特典を受けられます。
- 限定オンラインコミュニティへの参加権利
- 夕張メロンの引換券を受け取る権利
- 地域産品の限定特典や体験型特典
NFTを持っているだけで美味しいメロンを安く購入できるとあって、メロン好きの方が主に購入しています。すでにNFTは完売しており、地域活性化に役立っているのが見受けられます。
メロンを得られるという点ではふるさと納税とほぼ一緒ですが、メロンNFTにはコミュニティの参加権や限定特典が付きます。
アート以外の活用方法もある
NFTはアート作品の取引だけでなく、さまざまな分野での活用が進められています。例をあげると以下の通りです。
- ゲーム内アイテム
- 音楽
- 動画
- 電子書籍
- チケット
NFTといえばアートのイメージが強いですが、幅広いカテゴリでNFTが利用されています。また、学歴や資格の証明書、イベントのチケットなどをNFTとして発行する事例も増えてきました。
さまざまな活用方法があるため、どういった使い方があるかを考えることが重要といえます。
NFTの面白い活用事例
ここでは、NFTの面白い活用事例を紹介します。
- 日本で最も美しい村デジタル村民の夜明け事業
- 学歴証明書
- NFTカードゲームのSorare
- クラウドファンディングの支援証明コイン
事例①日本で最も美しい村デジタル村民の夜明け事業
「日本で最も美しい村デジタル村民の夜明け事業」は、政府の「地方創生SDGsモデル事業」として採択されたプロジェクトです。
日本の美しい村の魅力をデジタルの世界に持ち込むことを目標としています。
参加者はデジタル村民として、実際の村の風景や文化、歴史を体験することが可能です。
NFT技術を活用することで、各デジタルデータには独自性や希少性が保証されるため、実際の村の資源や文化遺産の価値を再評価する機会を提供しています。
地域振興や観光促進の取り組みとしても注目が集まっているプロジェクトです。
事例②学歴証明書
近年、学歴や資格の証明書をNFTとしてデジタル化する動きが見られます。実際に、 千葉工業大学が学位証明書をNFTで発行したことで話題を呼びました。
従来の紙ベースの証明書は偽造や紛失のリスクがありました。
しかしブロックチェーン技術により、学歴や資格の真正性が保証され、いつでもどこでも確認できるようになっています。
NFTの学歴証明システムが導入されたことで、企業の採用活動や学校の入学手続きの手間やコスト削減が期待されています。
事例③NFTカードゲームのSorare
Sorareは、実在するサッカー選手がNFTになっているオンラインカードゲームです。
Sorareの面白いポイントは、実際の試合結果に応じて選手の能力値が変わることです。NFTカードはデジタルで繋がっているため、試合結果をデジタルで受けて、その能力をNFTに反映します。
つまり、自分が「この選手は伸びる」と思って買っておいた選手のNFTカードが、とても強いカードとなる可能性があるのです。ただ単純に決められたパラメータだけでカード勝負するのと違って、現実のサッカー知識も試されるという新しい遊び方が可能になっています。
「選手のパラメータが変わる」という点も、既存のカードゲームにはないNFTならではの面白い特徴と言えるでしょう。
SorareはスポーツとNFTの融合による新しいエンタメとして、サッカーファンから注目を集めています。
NFTを始めるべき人の特徴
「NFTはやめとけ」と言う人もいますが、そんな中でもNFTを始めるべき人というのは存在します。
- 新しいテクノロジーに触れてみたい人
- 自身のコンテンツIPをすでに持っている
- 共通の価値観を持つ人とのつながりを増やしたい
新しいテクノロジーに触れてみたい人
NFTやブロックチェーンは、2021年頃から注目を集め始めたテクノロジーです。
新しいテクノロジーに興味があるひとにとって、NFTは魅力的な領域かもしれません。
NFTの取引やデジタルデータを所有するという新しい形を体験できるため、テクノロジーの進化を直接感じれるのが魅力の1つです。
自身のコンテンツを持っている
絵や写真、音楽など自身のコンテンツを持っている人も、NFTは向いています。
デジタルデータであればNFTに変換できるため、自身の作品をNFTとして発行すれば、収益を得たりファンとの繋がりを築けたりする可能性があります。
NFTを仮想空間に展示する「メタバース美術館」は、画家にとってひとつのヒントになるかもしれません。
メタバース美術館は、2023年8月にNHKでも特集されました。
共通の価値観を持つ人とのつながりを増やしたい
「同じアーティストが好き」「在宅での仕事が好き」など、共通の価値観を持つ人とつながりたい場合にもNFTは最適です。
たいていのNFTはDiscordやツイッターなどで「〇〇NFTプロジェクト」といった形で交流の場が用意されます。そのコミュニティは、同じNFTを保有する人が集まる場となっています。
共通の価値観や興味を持つ人々とのつながりを深めれば、情報交換や新しいビジネスチャンスを得ることだって可能です。
新しい友人やパートナーシップの機会を増やすこともできるため、つながりを増やすツールとしてもNFTはピッタリです。
NFTをやめておくべき人の特徴
NFTを始めるべき人もいれば、やめておくべき人も存在します。
- 投資で一攫千金を狙おうとしている
- IT知識・スキルを得るのに苦手意識がある
- NFTに関するマイナスなニュースを全て鵜呑みにしてしまう
投資で一攫千金を狙おうとしている
NFT投資で一攫千金を狙おうとしている人は、少なくともいまは止めておいたほうがいいかもしれません。
先に説明したように、NFT市場では取引高が減っており、無価値になるNFTも出てきています。何らかのNFTを買っておけば稼げていたときと現在では状況が変わってきています。
もちろんNFTについて知識が深く、将来性を見極められる方は投資目的で参入するのはありでしょう。
もし参入する場合は、それぞれのNFTプロジェクトをしっかり調べて、自分の判断で投資を行うようにしましょう。
→「NFT投資のやり方」
IT知識・スキルを得るのに苦手意識がある
NFTやブロックチェーンは、高度なIT知識やスキルを必要とする分野です。
テクノロジーの世界に対する苦手意識や不安感を持つ人々は、市場への参入障壁を感じることが多いため向いていません。
NFTの取引や管理にはウォレットの設定やトランザクションの理解など、特定の知識が求められます。ITに対する苦手意識があると、導入までに時間がかかり不利益となる可能性があるため注意が必要です。
NFTに関するマイナスなニュースを全て鵜呑みにしてしまう
NFTに関するマイナスなニュースを全て鵜呑みにしてしまう人は、NFTを始めるべきではありません。
メディアやSNS上では、NFTに関する様々な情報が飛び交っています。
中には、詐欺事件や市場の暴落など、マイナスな側面を強調するニュースも多いです。もし全体像を把握せずに判断を下してしまうと、誤った認識のまま不安だけが大きくなってしまう恐れがあります。
NFT市場に参入するのであれば、さまざまな情報を収集して冷静な判断を下せるようにしましょう。
NFTを安全に始めるための3つのポイント
NFTを始める際は3つの点を覚えておきましょう。
- NFTの知識を身に付ける
- NFTを買う際は審査制のマーケットプレイスを利用する
- いきなり高額のNFTは買わない
NFTの知識を身に付ける
NFTは知識がなくても売買はできますが、できることなら知識は身につけておいたほうが良いです。
自分でNFTを発行する場合は「どこのマーケットプレイスに出品するか」「どのブロックチェーンを選択するか」「市場のトレンドはどうなっているのか」などの知識はあった方がよいでしょう。
NFTを買う側であれば、NFTの知識はもちろんのこと暗号資産取引所の開設や売買なども行えた方が望ましいです。NFTの売買には暗号資産がどうしても付きまといます。
NFTを買う際は審査制のマーケットプレイスを利用する
安全にNFTを買いたいのであれば、審査制のNFTマーケットプレイスを利用しましょう。
NFTマーケットプレイスには多くのプラットフォームが存在します。その中でも、審査制のマーケットプレイスは品質や信頼性が高いNFTのみが取引される場として注目されているんですね。
出品されるNFTが一定の基準を満たしているかを確認しているため、偽物や低品質なNFTの出品はほぼありません。安全性を重要視するコレクターにとって、審査制のマーケットプレイスはおすすめの選択肢となりますよ。
いきなり高額のNFTは買わない
初心者やNFT市場に不慣れな人が、いきなり高額なNFTを購入することはおすすめしません。
市場の動向や価格の変動を十分に理解していない状態での高額投資は、損失を招く可能性が高いためです。
もしNFTを購入してみたい方は、低価格のNFTから購入してみると良いでしょう。
NFTが「やめとけ」と言われる背景のまとめ
NFTはやめとけと言われる理由は、「市場の問題」「法的リスクの問題」が多いです。
詐欺や不正などの悪いイメージが付いてしまっている点も挙げられるでしょう。
たしかにNFTにはマイナスな面もありますが、プラスの面もあります。特に大企業や自治体がNFTを活用している例からは、今後のNFTの可能性を感じさせられます。